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『アドバンス・ファイティング・ファンタジー』第二版

 アラフォー世代以上のオールドファンには、懐かしくも甘酸っぱい(?)響きをもって受け止められるであろうTRPG『アドバンスト・ファイティング・ファンタジー(Advanced Fighting Fantasy)』。その第二版の日本語版が、今年の4月に発売された。
 もうTRPGを遊んだりするわけでも無いのだが、『ファイティング・ファンタジー(Fighting Fantasy)』ファンとしては、つい懐かしさの余り購入してしまった。


アドバンスト・ファイティング・ファンタジー第2版

グレアム・ボトリー,スティーブ・ジャクソン,イアン・リビングストン/書苑新社

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 1980年代に世の子供達を夢中にさせたゲームブック。そのTRPGと本との融合というアイディアは、当時普及しつつあったコンピューターゲームとの融合と同じく、TRPGを独りでも楽しめる様にと工夫する潮流の一つであったが、残念ながらコンピューターRPGとは違い、一過性のブームで終わってしまった。
 そんなゲームブックのムーブメントを引き起こしたのが、ゲームズワーク・ショップ(Games Workshop)社の創設者であるスティーブ・ジャクソン(Steve Jackson)とイアン・リヴィングストン(Ian Livingstone)の共著『火吹山の魔法使い(原題:The Warlock of Firetop Mountain )』(過去記事)のヒットであり、そこから派生した「ファイティング・ファンタジー」シリーズや「ソーサリー(Sorcery!) 」四部作(過去記事)等であった事は、このBlogでも述べた。
 その「ファイティング・ファンタジー」や「ソーサリー」のルールと世界(タイタン)をTRPGで遊べるようにと作られたのが、TRPG『ファイティング・ファンタジー』だ。

 ルールはゲームブックの時と変わらず、キャラクターの能力値は「技術点」「体力点」「運点」の三つしかなく、何か行動の成否を判定するのはサイコロを2個振って(2d6)技術点以下を出せば成功、敵と戦うときは、2d6+技術点の高かった方が勝者で、負けた方は体力点から2点引く・・・というシンプルな物。
 ルールブックの殆どはTRPGに慣れる為の冒険のシナリオで、ルール説明自体は僅かなものだった。それ故にTRPGに初めて触れるという人には最高の入門ゲームだったが、それ以上では無かった。

 そんな不満を解消し、よりTRPGらしいゲームに改変したのが『アドバンスト・ファイティング・ファンタジー』だった。
 ただ大きなルール変更は無く、能力値は三つだけと潔く、行動判定や戦闘ルールもそのまま。その代わり、技術点にボーナスやペナルティを与える「特殊技能」のルールを加え、武器の種類を増やし、なんと言っても魔法のルールが出来た事だ。
 その甲斐あり(?)ルールブックのボリュームも二倍になったが、それでもページの半分は入門用のシナリオが占めていたり、同時期の『ダンジョンズ&ドラゴンズ(D&D)』と比べても単純なルールだった。

『アドバンス・ファイティング・ファンタジー』第二版_a0193363_14071725.jpg
 日本では文庫の形で出版され、『スティーブ・ジャクソンのファイティング・ファンタジー(原題:Steve Jackson's Fighting Fantasy)』は東京創元社の創元推理文庫から、『アドバンスト・ファイティング・ファンタジー(原題:Dungeoneer)』上下巻・『タイタン(原題:Titan)』(世界設定集)・『モンスター辞典(原題:Out of th Pit)』(モンスター集)、『謎かけ盗賊(原題:The Riddling Reaver)』(『FF』シナリオ集)は今は亡き社会思想社の現代教養文庫から、翻訳出版されていた。

 その他、社会思想社からは日本で製作された『タンタロンの立方体』(『AFF』用のシナリオ集)・『タイタンふたたび』(リプレイ集)が出版されていた。
(『タンタロンの立方体』『タイタンふたたび』は、持ち合わせが無く画像がありません)


 完成された汎用ルールシステムを売りにする第3世代TRPGというにはルールがシンプル過ぎ、特異な世界観を売りにする第2世代TRPGとしては背景世界「タイタン」が既存のゲームブックの寄せ集めなので統一感に乏しいという事もあり、正に第1世代TRPGと呼ぶべきゲームで、当時としては微妙な位置づけだった。実際に、このゲームで遊んでいるファンを見付けるのは(同じ社会思想社が翻訳出版していた)『トンネル&トロールズ(T&T)』ファンを見付けるより難しく、自分自身遊んだ事は無い。
 でも、『タイタン』は勿論、『モンスター辞典』やシナリオ集を読んでいると、そのビンテージ感溢れる世界観が懐かしく、また楽しくて、大人に成ってからも読み物として楽しめてしまう所が良いのだ。


 そんな穴蔵でカビていた『アドバンスト・ファイティング・ファンタジー』を2011年、新たに掘り起こし発表されたのが、この第二版。それが7年越しで日本語版が出版された。
 ルールブックとシナリオ『火吹山の魔法使い』の二冊セットでの販売だ。
『アドバンス・ファイティング・ファンタジー』第二版_a0193363_14070830.jpg
 昔はルールブックやサプリメントが文庫版で出る事があり、使いにくくてムカつく・・・と思っていたので、こうやってチャンとした判型で出てくれるなんて夢の様だ。

 ルールの骨格は変わっていないシンプルなシステムなのだが、幾つか変更点があった。

 先ずは魔法を使うキャラクターの為に「魔法点」が新設され、能力値が4つに増えた(「魔力ポイント」も加えると5つ)。
 また行動の可否や判定に修正を加える「特殊技能」に加え、ヒーローだけが持つ特殊能力として「タレント」が新設された。身体的才能に関わる"浅い眠り""俊足""暗視"といったものから、"騎士叙任""地位""使い魔"など社会的なものなど、生まれついて持ち合わせた特典を現しており、特殊技能と組み合わせてヒロイックな行動が取れる様になる。
 大きく追加されたのは魔法で、既存の「魔法」(体力点を消費せずに、魔力ポイントを消費するシステムに変更)に加え、生活を便利にする様な一寸した小魔法「まじない」、魔力ポイントではなく体力点と触媒を用いる「妖術」(「ソーサリー」の魔法を再現している)、司祭が用いる神の奇跡「神術」(『RuneQuest』風)と大幅に増強されている。

 その他、鎧のルールが細かくなったりと、様々な細かなルールが新設増補されているが、繰り返しになるが、基本的な骨格は変わっていない。

 個人的にはシンプルな骨格の割りに細かいルールが多過ぎかな・・・と思う所もあるが、遊ぶ人間が適当に取捨選択すれば良いだろうし、ルールブックもハウスルールを作る事を推奨する様な作りになっている。ファンの中には、重箱の隅をつつく様にルールで縛ろうとしたり、ルールシステムを駆使して出し抜こうとする輩がいるが、そういう人間はTRPG向きじゃないよ。

 TRPGの誕生から約40年、その間、ルールが複雑化したり、ミニチュア等のギミックが増えたりする中で、一番ベーシックだった『D&D』(赤箱の第四版ね)や『AD&D』の精神を受け継いでいるのが、実はこの『アドバンスト・ファイティング・ファンタジー』第二版なんじゃないかな・・・と思っている。

 

by redsoldiers | 2018-06-23 13:10 | アナログゲーム | Comments(0)

歴史軍装研究と模型製作の狭間に


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