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『T2 トレインスポッティング』

 原作小説では随分と前に続編が書かれていたらしいが、ここに来て映画版のまさかの続編が公開された。1996年当時、劇場に足を運んだ者としては、やはり2017年現在、劇場に足を運ばねば成らないだろう・・・。



『T2 Trainspotting』(2017年 イギリス)

監督/ダニー・ボイル(Danny Boyle)


 前作は無軌道ながらも、若さ故の根拠のない希望と勢いに満ちた作品で、ポップでスタイリッシュな映像と音楽が当時の若者達の心を捕らえて世界的なヒットを飛ばした。
 タバコ一本吸わない自分でさえも、ジャンキー達の「こんな生き方も良いかもね!」とか言って、一緒に鑑賞した彼女に「ばっかじゃないの?」と蔑まれた目で見られたものだ。

 最後に仲間から大金を奪って国を飛び出した主人公レントン。朝日を浴びて明るい未来が待っていそうだが、行き先がアムステルダムって辺りが嫌な臭いを感じさせるラストシーンから・・・20年。故郷のスコットランドに戻ってきたレントンが目にする、再開発で変わりゆく街と生活、変われない旧友たちの物語り。

 前作の登場人物が次々に登場し、見ている自分を棚上げして「みんな老けたなぁ。」などと感慨にふけるし、前作のシーンを何度もフィードバックさせたり、オマージュ的なシーンが登場するので、前作を観た人間はニヤリとさせられるし、ノスタルジックな気分にも浸るのだが、前作を見ていない人間には全然伝わらないし、ストーリーも分からないだろう。
 そもそも男なんて集まって酒を飲めば「女と仕事と過去の話」しかしない生き物だが、映画の作りと同じように、主人公達は大人子供のまま変わらずに、過去にとらわれているどころか、過去に生きていると言っても過言ではない。

 1996年当時は古くさび付いていたスコットランドの街並みが、今や再開発で古い物をドンドンとゴミに出し、新しい建物と設備が次々に建てられ、オシャレで好景気に沸いている・・・どこか恐ろしく空虚だが。
 そんな時代の波に乗りきれず、相も変わらずの生活を送っている主人公達とはいえ、時の流れは確実に刻み込まれている。それはシワが増えただの、髪が薄くなっただの、腹が出ただのだけじゃない。結婚や離婚、仕事の成功と失敗、子供の誕生に親の死・・・。

 港から出る船は、何処に向かうのも自由だ。その先に宝島が待っているか、海竜が口を開けて待っているか、はたまた何もない海原しか待っていないのか・・・それは分からない。在るのは空っぽの船倉と、胸一杯の希望と不安。
 では、様変わりした港に戻って来た船はどうだろう?見た目は古びた船体だが、船倉の中には何が積まれている?胸に抱くのは何だ?この21年、どんな航海をして来た?これから20年、30年、どうやって生きていく?
 さぁ、選べ。

 人生を振り返り、問いかけられているのは主人公達ばかりじゃない。
 
 
by redsoldiers | 2017-04-20 11:29 | 映画 | Comments(0)

歴史軍装研究と模型製作の狭間に


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