人気ブログランキング | 話題のタグを見る

ソ連軍兵舎の陸軍組立式ベッド

 前回のストゥールに続いて陸軍組立式ベッド(Кровать армейская разборная)を作ります。
 組立式と言っても、野営などで用いる折畳式では無く兵舎の中に常設して用いるベッドで、前後の枠と寝台部分の三つに分解して収納・運搬出来る・・・という物です。

 資料が無いか調べていると、ソ連邦の国家標準規格(ГОСТ:Государственный стандарт)が出てきました。コードは【ГОСТ 2056-77】。
 1977年から基本設計は変わらず、現在に至るまでソ連軍やロシアを初めとする独立国家共同体では、この規格に沿って製造され、使用されています。
 ただ、この設計図自体は非常にザックリとした記載しかなく、東京フィギュアソサエティ(TFS)の忘年会でエンジニアであるバームさんに見せた所「この図面で工場に出したら、こんな数字が入って無い図面じゃ作れないぞ!と職人に言われちゃうよ。」と言われてしまう様な内容です。逆に言えば、必要最低限の品質と寸法だけ要求しているので、現場がフレキシブルに対応出来て非常に合理的だとも指摘されました。なるほど。そんな訳で、このГОСТの書類を見ただけでは、全ての部品の寸法は分かりません。更に、時期や工場の違いによるものなのか、形状にバリエーションが散見されます。
 そこで、1980年代から'90年代に用いられていた製品を、ГОСТを基に、写真資料で補完しながら再現しました。因みに、一段ベッド型と二段ベッド型があり、今回は一段ベッドを再現しました。


 ГОСТに記載がある寸法の図面は下記の通り。
 
ソ連軍兵舎の陸軍組立式ベッド_a0193363_18383943.jpg
 文面にはパイプの太さに関して、①②:28-33mm/③:10-12mm/⑤:14-22mm/④:32-40mmの範囲で作れ・・・とあります。金網の寸法に関しても色々あるのですが、そこまでは再現しない事にしたので、ここでは省略。
 これに足りない部分を写真や図面から推測して数値を入れ込み、1/35に縮小し、模型としての雰囲気や強度を考えながら製作していきます。

 因みに、今回はベッド2台が必要になりますが、その代わり、ビネットのベースからはみ出す部分は作りません。

 足元の脚と寝台の枠をエバーグリンのプラ棒を用いて製作。曲げる部分は、熱してから適当な棒でグイグイと・・・本当は真鍮線と半田付けで作れば良いのでしょうが、スキルが無い物で・・・。
 今回は、Chop-It(紹介記事)が在って助かりました。
ソ連軍兵舎の陸軍組立式ベッド_a0193363_18254344.jpg
 逆U字の外枠は1mm、横棒は0.8mm、中の格子は0.5mmのプラ棒を使用。横棒の間隔は11mm、下の横棒から床までの距離は8.5mm取りました。
 因みに、図面には脚に四角い座金の様な部品が付く様に成っていますが、実際には取り付けられていない様です。代わりにコースターの様な板が敷いてある事が多く、今回はそれを再現しています。

 寝台の枠のL型鋼材(アングル)は幅1mm・厚さ0.25mmのプラ棒をL型に組んで作っています。
 図面には特に指示が無いので、寝台の枠の曲げ方や組立の構造にはバリエーションが見受けられます。ここでは最も一般的な形状を再現しています。
ソ連軍兵舎の陸軍組立式ベッド_a0193363_18255211.jpg

 枠に金網とスプリングを取り付け、毛布をセットした状態のマットレスを用意します。
 寝台の金網やスプリング、マットレスの裏側は、下からのぞき込んだ時にそれっぽく見える程度の再現です。
ソ連軍兵舎の陸軍組立式ベッド_a0193363_18260248.jpg
ソ連軍兵舎の陸軍組立式ベッド_a0193363_18261273.jpg
 寝台の金網はエッチング素材、スプリングは1.0mmスプリングを、それぞれカットして用いました。共にWAVEの製品ですが、エッチングのメッシュは現在は作っていない様ですね。

 マットレスは重量や加工のし易さを考えて1mmプラ板を二枚重ねてカットした物に、水溶きした木工ボンドを染み込ませたティッシュを毛布に見立てて巻き付けてあります。
 ベッドメイクのやり方は各国軍に寄って違うのですが、ソ連軍の資料が見当たらなかったので、現ロシア軍のやり方を参考にしました。


 脚の枠と寝台を接着。
ソ連軍兵舎の陸軍組立式ベッド_a0193363_18262343.jpg

 余分な部分をカットして、ベースにセットすると、こんな感じ。
ソ連軍兵舎の陸軍組立式ベッド_a0193363_18263437.jpg

 マットレスを載せて完成・・・
ソ連軍兵舎の陸軍組立式ベッド_a0193363_18264334.jpg

・・・といきたい所ですが、スプリングとプラ板が干渉してしまって浮き上がってしまうんですね。毛布の重なった部分の収まりも悪くて、寝台とフィットし難いし・・・ちょっと調整が必要だな・・・いっそパテで作り直すかなぁ・・・。
ソ連軍兵舎の陸軍組立式ベッド_a0193363_18265337.jpg
 
 ・・・つづく
 
  


by redsoldiers | 2017-12-28 10:48 | フィギュア製作 | Comments(0)

歴史軍装研究と模型製作の狭間に


by redsoldiers
カレンダー
S M T W T F S
1 2
3 4 5 6 7 8 9
10 11 12 13 14 15 16
17 18 19 20 21 22 23
24 25 26 27 28 29 30
31