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第25回 クルムバッハ・ドイツ&国際錫人形フェア(6) 今後の展望

 68年、25回目を迎えたドイツ・クルムバッハ(Kulmbach)市のドイツ&国際錫人形フェア(25. Deutsche und Internationale Zinnfigurenbörse)。その伝統に裏打ちされたフェア故に、フィギュア(特にフラットフィギュア)文化に共通する問題をはらんでいるのも確かです。

 伝統は保守性の裏返しでもあり、一つ間違えると停滞や衰退を招き、現にフラットフィギュア愛好家の高齢化が進んでいます。今年は猛暑で来場を控えた人が多かったというのも、高齢化現象の一つでしょう。
 クルムバッハのフェアも、集客効果を狙ってフィギュア・コンテストを開催したりと努力はしていますが、来場者が減ってきているという話ですし、クルムバッハ市も熱意を持って後援している訳ではなさそうです。街のシンボルでもあるプラッセン城(Plassenburg)にある博物館(Museen auf der Plassenburg)には世界最大規模のフィギュア博物館がありますが、市としてはフィギュア部門の縮小も考えているそうです。
 これはフェアのみ成らずフィギュアの世界全体に言える事ですし、プラモデルや鉄道模型、切手収集など、既存の"男の趣味"全体に言える事でもあります。流行廃りはありますから。こういった"男の趣味"の高齢化問題の波を強く受けているのがフラットフィギュア・・・というのは、最も古いスタイルのミニチュアフィギュアだからでしょう。そしてフラットフィギュアが中心のクルムバッハのフェア故に、問題は大きくなるのだと思います。

 一方で、同じフィギュアでもミニチュアゲームの世界は、イベントをやれば老若男女で万単位の動員があり、メーカーや新しい商品が次々に発売される・・・という現象が起きています(5年後、10年後にどうなっているかは分かりませんが)。映画やアニメ、コミックといったキャラクター物のフィギュアの人気も大きくなっています。
 その流れをクルムバッハのフェアでも取り込めば・・・という意見もありますが、逆にクルムバッハのフェアらしさは薄まります。他と変わらないイベントに、わざわざ世界中から人は来ないでしょう。難しい問題です。

 はっきり言ってしまえば、フラットフィギュアというジャンルは、もう成長の止まった世界です。これから市場が大きくなる事も無いし、何かが大きく変わる事も無く、必要も無い・・・型と形をしっかり守って継承していく伝統工芸の域に達したと思うからです。
 ドイツにあるフラットフィギュアのクラブは連帯し、定期的なミーティングや、若い人向けのワークショップを開催しています。手芸的趣味として、女性の愛好家も出てきている様に思われます。充分じゃないでしょうか?
 地球の地軸がひっくり返る様な天変地異が無い限り、これからも市場は縮小していくでしょう。ただし型と形を守って、愛好家が愛好家らしく振る舞っている限り、在る一定数で市場は推移していくと思います。それでも縮小が止まらず、無くなってしまったら・・・?それはそれで良いじゃないですか。何故なら人類にもう必要とされなくなった訳ですから。


 一方で出来る事をやらずに衰退するというのは良いことではありません。
 前述した様に、愛好家やクラブがフラットフィギュアに親しむ努力を続けている一方で、ドイツのメーカーやショップの多くが手をこまねく事すらしていないじゃないか!というフラストレーションも耳にしました。

 例えば、facebokやツイッターといったサービスを活用する処か、まともなサイトやE-mailアドレスも無かったりする業者も沢山いるという現実があります。一頃よりは、ネット対応出来る業者が増えたとは言え。
 またドイツ国内だけでは無く、海外にも市場が拡大出来る機会があるというのに、英語対応が出来ないというのは苦しいでしょう。カタログやサイトもドイツ語のみで、英語でメールを送っても無視されてしまう事もままあるようです。
 それも仕方が無い面もあるのです。多くが個人のプライベートブランドであったり、若い人が少ない訳ですから。
 しかし少なくとも、ファミリービジネスとはいえ商売をしているメーカーやショップなら、ネットで情報が入手出来る様に対応すべきでしょうし、カタログがドイツ語だけでも良いけど、それよりも最低限、商品の画像を載せるとか、外国語であってもコミュニケーションを取る努力はすべきでしょうね・・・ビジネスなんだから。チャンスがあるんだから!
 現に、こういった努力を少なからずしているショップは、売り上げを伸ばしているらしいです。

 またフェアに際しても、新商品を出してこず、既存の商品を並べるだけ・・・というフラットフィギュアメーカーも多く、それでいて「売り上げが悪い。」とぼやくのは、確かに間違っていますね。たまに来る外国人ならともかくとして、毎回同じ顔ぶれが、代わり映えしない商品を並べているんでは、そりゃ来場者も減るよな・・・という話。


 伝統と保守の危ういバランスの中にあるクルムバッハ・ショウですが、70周年の次回第26回大会では、なんと物理的な変革が訪れる様です。それは市の広場の大改修事業です。
 メイン会場のテントが設置されているのは、普段何も無い広場なのですが、その地下には駐車場が広がっています。この地下駐車場の老朽化にともなう改修工事が行われるそうです。従って、次回以降、使用しているテントが新しくなり、フェアのレイアウトも大きく変わるとか。
 こういった事情から、「次回2017年のフェアは、大きな変革と節目の年になるハズ!」と、目をキラキラさせて語っていた愛好家もいたよ・・・という話で、閉めさせて頂きたいと思います。


第25回 クルムバッハ・ドイツ&国際錫人形フェア(6) 今後の展望_a0193363_18475587.jpg

by redsoldiers | 2015-11-25 18:48 | レポート(模型関連) | Comments(0)

歴史軍装研究と模型製作の狭間に


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