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新しい読書法 -『チェスの話』を読みながら-

 どうも自分は集中力が無くって、どんなに興味深い本を読んでいても、ちょいちょい気が散ってしまう。
 体力が無いのか、十分に一度は本から目を上げてしまうし、二十分に一度はトイレに行ったり、コーヒーを飲んだり、息抜きをしてしまう。

 活字を目で追っていても、その内容から類推される記憶をまさぐってしまい、以前見聞きした事や読んだ本をひもといて、もう一度、知識を系統立てて再構築する作業を始めてしまったり・・・場合によっては、そこから想像や推測の羽を広げてしまったり・・・酷い時には、読書を中断してしまったりする。

 これは何かのテーマについて調べる為に、複数の本を同時並行的に開いているなら良いのだが、一冊の本を読むという行為に限って言えば良い事では無い。
 物語に限らないが、一つの流れに乗ってしまわないと、どうも良くない。本という物は、そういう構造の物として作られているのだから。

 最近、寝る前のひととき、グラスを片手に本を読む事が多い。
 基本的に、頭が明瞭では無い状態で読書をしても意味が無いので、アルコールをとりながら読書するという事はしなかった。
 たとえアルコールを口にしても、大きな氷に蒸留酒を少しばかり注ぐ程度なので、酔っているというにはあたらない。

 しかしながら、昨夜はシュテファン・ツヴァイク(Stefan Zweig)の短編「チェスの話」を読みながら、ウィスキーを口にすると、まもなくほろ酔い気分に陥った。
 やがて頭はぼんやりとし、視界の端はかすみ、紙面の上の活字しか目にする物は無くなった。
 いつもより多めにアルコールを注いだせいだろうし、疲れていたからもあるだろう。私は本を読みながら酔ったのだ。

 しかしどうだろう、残酷な現実をチェスという熱にうかされる事で生き延びた人々の、風変わりな寓話が私をとらえ、踊る活字は紙面から目へと吸い寄せられ、そこから頭に浮かぶイメージ以外は何ものも心をとらえることは無かった。
 活字を追い、ページをめくり、時折、グラスを口元に運ぶ。その無機質なまでの繰り返しの中、頭と心は有機的に熱くなり、気がつけば最後の一ページをめくっていた。

 酒に酔い、熱に浮かされ、半ば脳が痺れた有様で活字をむさぼる様に追う。眠気のそれとは違う頭の痺れ。
 本を読むという作業は、脳を半ば動きを止めなければならないのかも知れない。




 読んでいたのは、こちらの本。

チェスの話――ツヴァイク短篇選 (大人の本棚)

S.ツヴァイク / みすず書房


『チェスの話――ツヴァイク短篇選 (大人の本棚)』
著/シュテファン・ツヴァイク

みすず書房 2011年


 コレクター諸氏なら誰でも身につまされるであろう「目に見えないコレクション」。〇〇洋書の店員さんは、まるで「書痴メンデル」みたいだ・・・と言った人がいたとか、いないとか。これはSM小説か!?と思わせる不倫物サスペンス「不安」。そして表題作「チェスの話」の四編を収録。
Commented by 樹梨 at 2014-09-18 22:50 x
それってアル中では?
・・・と、今日も酔いながらペイントしてる私。
お互いダイエットしないとそろそろヤバイですよね〜。
Commented by 赤いお母さん at 2014-09-19 00:35 x
集中力が高まる薬・・・とか、普段聞こえない音が聞こえる薬・・・とかに手を出さないだけ、ましかと・・・。

因みに今週から、妻と40分程度のウォーキングを始めました。
おかげでペイントしている時間がございません。むむ。
by redsoldiers | 2014-09-18 17:07 | 書籍 | Comments(2)

歴史軍装研究と模型製作の狭間に


by redsoldiers
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