誤解の流布(5) 「VSR/Schofield」迷彩
2014年 03月 14日
クリミア半島に展開する謎の武装集団。
最新式のロシア製装備を身につけているものの、所属や階級が分かる徽章類を一切身につけていないのだが、これって便衣隊扱いなのかしら・・・捕まったらジュネーブ条約を適応して貰えないのかしら・・・等と、思う今日この頃。
さて、前回、もっとグダグダな例を紹介すると書いたが、その例を紹介したい。
ソ連崩壊後、1990年代に渡って、混乱期エリツィン時代を象徴するかの様に、ロシア軍に用いられた主要な迷彩服のパターンが、下図の物である。
前述の「ブターン」迷彩を縦長にした様なパターンで、その色彩配列には、KLMKや国境警備隊迷彩服に用いられた幾何学模様の二色迷彩に相通じる物を感じる。
色調も「ブターン」同様、数種類が確認されている。業者やコレクターは、季節や地形に合わせたバリエーションだと勝手に決めつけているが、証拠はない様だ。恐らく、実際に色々な色調の製品を作ってみて、部隊での運用を通して、実地で試験していたのではないだろうか。
さて、この迷彩を市場では「VSR」迷彩とか、「Schofield」迷彩だとか呼ぶ事が多い。
その大きな原因を作ったのが1998年に出版されたデニス・デズモンド(Dennis Desmond)氏の 『Camouflage uniforms of the Soviet union and Russia』。
この本の中で、その二つの名称を用いたのが原因だと思われる。
『Camouflage uniforms of the Soviet union and Russia』
著/Dennis Desmond
Shiffer 1998
ISBN 0-7643-0462-3
このデズモンド氏、軍に勤務し、当時、アメリカ政府に情報アナリストとして採用されているという著者の経歴に期待してしまうが、「彼の趣味に挙げられるのは、ソ連とロシアの制服コレクション、そして旅行。」という一文が的を射ている。
立場を利用して、ロシアの軍施設に出入りしたり、コレクションの充実に努めた様だが、研究者というにはお粗末で、本の内容も、まぁ、雑。
一寸読んだだけでも突っ込みどころは満載だが、立派な装丁で出版されてしまい、世界中の業者とコレクターに影響を与えてしまった様だ・・・。
「VSR」迷彩の語源だが、「ロシア軍(Вооруженные силы России)」をローマ字化した「Vooruzhennye sili Rossii」の頭文字をつけただけ。つまり「ロシア軍」迷彩という意味だ。
確かに、新生ロシア軍を象徴する様な迷彩パターンだが、後述する例でも分かるように、この迷彩パターンが採用されたのは、ソ連時代である事から、この名称は正しくない。
もう一方の「Schofield」迷彩だが、これはもっと酷い。
この迷彩を西側に初めて紹介したのが、『Inside the Soviet Army』(1991)の著者であるキャリー・スコフィールド(Carey Schofield)女史だから・・・と言う物。
確かに著書の中で、ソ連軍施設を取材するスコフィールド女史が、独りこの迷彩服を着用している姿が映っている(他の軍人はブターン迷彩姿)。この写真を見てデズモンド氏は「Schofield Pattern」という名称を思い立ったらしく、直ぐにコレクター業界の間で広まったと、一寸自慢げに書いている。
更にグダグダなのは、この名称を日本の雑誌で用いた際に、某著名ライターが「ショフィールド」と片仮名表記してしまった事。
以降、今に至るまで、雑誌を初め、業者やコレクターの間では、「ショフィールド」迷彩という呼称が飛び交う様に成ってしまった・・・。
確かに「schofield」をキリル文字にすると「Шофилд(ショフィールド)」となる様なので、もしかするとロシア人の発音を聞いたのかも知れないが・・・この方、他にも地名の発音間違いなど前科が多いので・・・まぁ、間違ったんだろう。
因みに、大統領がプーチンに替わる頃に、ロシア軍は更なる新しい迷彩パターンへと切り替えていく。
この新しい迷彩が、業者やコレクターの間では「Flora」迷彩と言われるパターンで、ロシア兵の間では「スイカ(арбуз)」と呼ばれたという。
「VSR/Schofield」迷彩については、サイトの作例記事も参照の事。
誤解の流布(4) 「ブターン」迷彩
誤解の流布(3)
誤解の流布(2) Vallejoの片仮名表記
誤解の流布(1) 「ТАНКはタンク」
最新式のロシア製装備を身につけているものの、所属や階級が分かる徽章類を一切身につけていないのだが、これって便衣隊扱いなのかしら・・・捕まったらジュネーブ条約を適応して貰えないのかしら・・・等と、思う今日この頃。
さて、前回、もっとグダグダな例を紹介すると書いたが、その例を紹介したい。
ソ連崩壊後、1990年代に渡って、混乱期エリツィン時代を象徴するかの様に、ロシア軍に用いられた主要な迷彩服のパターンが、下図の物である。
前述の「ブターン」迷彩を縦長にした様なパターンで、その色彩配列には、KLMKや国境警備隊迷彩服に用いられた幾何学模様の二色迷彩に相通じる物を感じる。
色調も「ブターン」同様、数種類が確認されている。業者やコレクターは、季節や地形に合わせたバリエーションだと勝手に決めつけているが、証拠はない様だ。恐らく、実際に色々な色調の製品を作ってみて、部隊での運用を通して、実地で試験していたのではないだろうか。
さて、この迷彩を市場では「VSR」迷彩とか、「Schofield」迷彩だとか呼ぶ事が多い。
その大きな原因を作ったのが1998年に出版されたデニス・デズモンド(Dennis Desmond)氏の 『Camouflage uniforms of the Soviet union and Russia』。
この本の中で、その二つの名称を用いたのが原因だと思われる。
『Camouflage uniforms of the Soviet union and Russia』
著/Dennis Desmond
Shiffer 1998
ISBN 0-7643-0462-3
このデズモンド氏、軍に勤務し、当時、アメリカ政府に情報アナリストとして採用されているという著者の経歴に期待してしまうが、「彼の趣味に挙げられるのは、ソ連とロシアの制服コレクション、そして旅行。」という一文が的を射ている。
立場を利用して、ロシアの軍施設に出入りしたり、コレクションの充実に努めた様だが、研究者というにはお粗末で、本の内容も、まぁ、雑。
一寸読んだだけでも突っ込みどころは満載だが、立派な装丁で出版されてしまい、世界中の業者とコレクターに影響を与えてしまった様だ・・・。
「VSR」迷彩の語源だが、「ロシア軍(Вооруженные силы России)」をローマ字化した「Vooruzhennye sili Rossii」の頭文字をつけただけ。つまり「ロシア軍」迷彩という意味だ。
確かに、新生ロシア軍を象徴する様な迷彩パターンだが、後述する例でも分かるように、この迷彩パターンが採用されたのは、ソ連時代である事から、この名称は正しくない。
もう一方の「Schofield」迷彩だが、これはもっと酷い。
この迷彩を西側に初めて紹介したのが、『Inside the Soviet Army』(1991)の著者であるキャリー・スコフィールド(Carey Schofield)女史だから・・・と言う物。
確かに著書の中で、ソ連軍施設を取材するスコフィールド女史が、独りこの迷彩服を着用している姿が映っている(他の軍人はブターン迷彩姿)。この写真を見てデズモンド氏は「Schofield Pattern」という名称を思い立ったらしく、直ぐにコレクター業界の間で広まったと、一寸自慢げに書いている。
更にグダグダなのは、この名称を日本の雑誌で用いた際に、某著名ライターが「ショフィールド」と片仮名表記してしまった事。
以降、今に至るまで、雑誌を初め、業者やコレクターの間では、「ショフィールド」迷彩という呼称が飛び交う様に成ってしまった・・・。
確かに「schofield」をキリル文字にすると「Шофилд(ショフィールド)」となる様なので、もしかするとロシア人の発音を聞いたのかも知れないが・・・この方、他にも地名の発音間違いなど前科が多いので・・・まぁ、間違ったんだろう。
因みに、大統領がプーチンに替わる頃に、ロシア軍は更なる新しい迷彩パターンへと切り替えていく。
この新しい迷彩が、業者やコレクターの間では「Flora」迷彩と言われるパターンで、ロシア兵の間では「スイカ(арбуз)」と呼ばれたという。
「VSR/Schofield」迷彩については、サイトの作例記事も参照の事。
誤解の流布(4) 「ブターン」迷彩
誤解の流布(3)
誤解の流布(2) Vallejoの片仮名表記
誤解の流布(1) 「ТАНКはタンク」
by redsoldiers
| 2014-03-14 16:17
| 軍装
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