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ヒストリカルフィギュアに準ずるモノ~フィギュア文化論~(2)

 欧米(というか欧州)の「フィギュア」文化の源泉を求めるのは難しい。しかしながら、源流・・・すなわち現在親しまれている「フィギュア」の規範となるべき古典は、ドイツ近世の錫人形と言えるのではないか。

 このドイツの錫人形、大らかな作りにペンキで塗装した「トイソルジャー」にしろ、繊細な作りの「フラットフィギュア」にしろ、元々は子供の玩具である。集めて、並べて、戦争ごっこをして楽しむのだ。
 やがて、この子供の玩具を大人の観賞に堪えうる品質へと昇華させる職人が現れたおかげで、「フィギュア」は大人の趣味の一つと成っていく訳である。

 こうして錫人形は、子供の玩具でなく愛好家のコレクションへ、ただ並べるだけではなく精緻なディオラマ・シャドーボックス・パノラマ作品へ、戦争ごっこは机上演習・・・即ちシミュレーションゲーム・アクチュアルウォーゲームへ・・・と、進化していく。
 扱うテーマも、当初は“鉛の兵隊”であったが、原始古代から現代の様々な人物、更にはSF・ファンタジー・童話・映画へと拡がってゆく。

 更にアクチュアルウォーゲームはアメリカに渡り、1970年代に『ダンジョンズ&ドラゴンズ』を生みだし、テーブルトークRPGという新しいカルチャーを誕生させる。そしてフィギュアは、TRPGの駒という役割をも担う事となる。
 このTRPGの駒として販売された25~28mmサイズのフィギュアは、比較的安価という事もあり、多くの新しい「フィギュア愛好家」を増やし、すそ野を広げたのでは無いだろうか。かくいう、私も、その一人である。
 そしてそのフィギュアは、多くが「ファンタジーフィギュア」であった。

(そんなあの時代のフィギュアを紹介するblog「80'sメタルフィギュア」。やっぱり、あの時代は熱かったね!)


 私自身は、俗に言う「ヒストリカルフィギュア」と、『ウォーハンマー』などを筆頭とする「ファンタジーフィギュア」とは、模型としては別段差別をする気はない。
 作品の制作行程の中に時代考証の楽しみ(苦しみ)が在るか、無いか・・・というだけで、技術的な部分も含めて、楽しみ方は共通だからである。

 そもそも「ヒストリカルフィギュア」と称して、歴史を題材としていると称するフィギュア群の中で、どれほどが時代考証に忠実な作品があるのだろうか?
 見栄えを重視してディフォルメされた商品は多いし、史料の乏しい古代をテーマにしたフィギュアなんて、ほとんどが想像の産物と化し、ファンタジーフィギュアと一体どこが違うのだろうか?
(無論、不明瞭な部分を考証の末の推測で補い、立体化する努力をファンタジーと一刀両断する気はない)
 宗教や神話、歴史小説、映画や絵画を再現したフィギュアは、「ヒストリカル」かも知れないが、「リアル」では無いし、「ファンタジーフィギュア」でもあり、「キャラクターフィギュア」でもある。
 厳密に区別する事は難しいのが、お分かり頂けるだろうか?



 ・・・では、何を私は区別しているのか・・・それは次回。


(つづく)
by redsoldiers | 2012-06-01 12:00 | 模型論考 | Comments(0)

歴史軍装研究と模型製作の狭間に


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