『ロルドの恐怖劇場』
2016年 11月 22日
丁度、一年ほど前に当ブログでも紹介した(過去記事)『グラン=ギニョル傑作選―ベル・エポックの恐怖演劇』。20世紀初頭、パリの「グラン=ギニョル座(Le Théâtre du Grand-Guignol)」で上演された一連の恐怖演劇の脚本7本と主要作品60編のあらすじ、劇場の歴史や資料をまとめた書籍だ。
ここに納められた脚本『幻覚の実験室(Le laboratoire des hallucinations)』を共同執筆したのが、座付き作家で「恐怖のプリンス」ことアンドレ・ド・ロルドその人である。
『ロルドの恐怖劇場』
著/アンドレ・ド・ロルド(André de Lorde)
編訳/平岡敦
筑摩書房 2016年
ISBN978-4-480-43375-6
ロルドは1869年にフランス・トゥールーズの裕福な医者の家に生まれた。
息子が己の跡目を継ぐ事を期待した父親は、死体を前にしても動じない男に育てるべく息子を病院のモルグに連れて行く等の英才教育を施したが、期待に反して息子は死体を恐れるどころか、死体に、死に、そして人間の狂気に魅了された男に育ってしまった。
結局、父親の後を継ぐ事無く、法律の世界を志すも演劇の世界に引き寄せられ、図書館司書という堅実な仕事に尽きつつ脚本の執筆に励む事となる。20世紀に入るとグラン=ギニョル座の座付き作家として活躍、150編以上の脚本や小説を執筆し、「恐怖のプリンス」と呼ばれる人気を博する。
生前のロルドは、『Cauchemars(悪夢)』(1912年)、『Frissons(戦慄)』(1920-1921年)、そして前記二冊に掲載された作品の再録を中心とした『Figures de cire(蝋人形)』(1932年)という三冊の短編集を出版している。
この『ロルドの恐怖劇場』は、彼の全短編42編と長編1編を納めて1993年に出版された『Contes du Grand-Guignol, Fleuve Noir(グラン=ギニョルの物語:黒い川)』から、短編22編を訳出した物である。
ここに納められたロルド作品は、外科手術や精神病院、狂人や死体、蝋人形といったオドロオドロしいギミックを用いる事もあるものの、全てが血の惨劇(スプラッター・ホラー)という訳では無く、推理小説、人情話や情愛物など物語の形態は多岐にわたっているが、総じて人間の狂気を描いている。恐ろしくも悲しいのは、人間である・・・という事なのだろう。
作品の中には、収録された「精神病院の犯罪」「ヒステリー患者」「究極の責め苦」「死児」「事故」「恐怖の実験」「告白」など、グラン=ギニョル座用の脚本を小説に描き直した物もある(或いは、その逆か)。中には随分とアレンジを加えたモノもあり、読み比べてみるのも楽しいと思う。
古い作品であるからして、読み始めからラストが予見できたり、どこかで聞いた事ある様な話だな・・・という感覚は免れないが、通俗小説であるし、ホラーやミステリーの定番を踏襲している訳だし、いや、むしろココがオリジンかも知れない。
アングラ臭漂う20世紀初頭の雰囲気や、いかにものフレンチ・ホラーを楽しみたいなら、お薦めである。
ここに納められた脚本『幻覚の実験室(Le laboratoire des hallucinations)』を共同執筆したのが、座付き作家で「恐怖のプリンス」ことアンドレ・ド・ロルドその人である。
『ロルドの恐怖劇場』
著/アンドレ・ド・ロルド(André de Lorde)
編訳/平岡敦
筑摩書房 2016年
ISBN978-4-480-43375-6
ロルドは1869年にフランス・トゥールーズの裕福な医者の家に生まれた。
息子が己の跡目を継ぐ事を期待した父親は、死体を前にしても動じない男に育てるべく息子を病院のモルグに連れて行く等の英才教育を施したが、期待に反して息子は死体を恐れるどころか、死体に、死に、そして人間の狂気に魅了された男に育ってしまった。
結局、父親の後を継ぐ事無く、法律の世界を志すも演劇の世界に引き寄せられ、図書館司書という堅実な仕事に尽きつつ脚本の執筆に励む事となる。20世紀に入るとグラン=ギニョル座の座付き作家として活躍、150編以上の脚本や小説を執筆し、「恐怖のプリンス」と呼ばれる人気を博する。
生前のロルドは、『Cauchemars(悪夢)』(1912年)、『Frissons(戦慄)』(1920-1921年)、そして前記二冊に掲載された作品の再録を中心とした『Figures de cire(蝋人形)』(1932年)という三冊の短編集を出版している。
この『ロルドの恐怖劇場』は、彼の全短編42編と長編1編を納めて1993年に出版された『Contes du Grand-Guignol, Fleuve Noir(グラン=ギニョルの物語:黒い川)』から、短編22編を訳出した物である。
ここに納められたロルド作品は、外科手術や精神病院、狂人や死体、蝋人形といったオドロオドロしいギミックを用いる事もあるものの、全てが血の惨劇(スプラッター・ホラー)という訳では無く、推理小説、人情話や情愛物など物語の形態は多岐にわたっているが、総じて人間の狂気を描いている。恐ろしくも悲しいのは、人間である・・・という事なのだろう。
作品の中には、収録された「精神病院の犯罪」「ヒステリー患者」「究極の責め苦」「死児」「事故」「恐怖の実験」「告白」など、グラン=ギニョル座用の脚本を小説に描き直した物もある(或いは、その逆か)。中には随分とアレンジを加えたモノもあり、読み比べてみるのも楽しいと思う。
古い作品であるからして、読み始めからラストが予見できたり、どこかで聞いた事ある様な話だな・・・という感覚は免れないが、通俗小説であるし、ホラーやミステリーの定番を踏襲している訳だし、いや、むしろココがオリジンかも知れない。
アングラ臭漂う20世紀初頭の雰囲気や、いかにものフレンチ・ホラーを楽しみたいなら、お薦めである。
by redsoldiers
| 2016-11-22 18:40
| 書籍
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