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Scorpions 「The best is yet to come」

 初めてファンになったバンドはScorpionsだった。
 当時、リリースされた最新作『Crazy World』(1990年)からは、1989年にモスクワで行われたライブでの体験を元にした「Wind of Change」がシングルカットされ、ベルリンの壁崩壊を初めとする東西冷戦の終結という時代の風に乗り世界的にヒット。のみならず、ゴルバチョフソ連邦大統領にゴールドディスクを手渡すなど社会現象となっていた。
 正直言うと、この「Wind of Change」という曲は好きでは無く、それとは全く関係の無い所で、『Crazy World』というアルバムに魅了され、Scorpionsというバンドのファンになった。

 以来、毎月小遣いを貯めてはCDショップに通い、1枚アルバムを買っては、LPならばすり切れるほど、毎日毎日、朝から晩まで、その1枚を一ヶ月は聴き続けた。
 その時点で既に20年近い歴史のあるバンドだったから、1枚づつ過去のアルバムをさかのぼれば、時代の変化もあれば、音楽性の変化もある。時に驚愕もしたが、放り出すには悔しくて(金が無かったからね)必死に一ヶ月も聴き続ければ好きにもなるという物だ。

 初めて足を運んだロックバンドのライブもScorpionsだった。
 初めて買ったロックTシャツもScorpionsだった。
 とにかく初めての全てがScorpionsだった。

 過去の全てのアルバムを買った。未発表曲が入っていると聞けば、外盤屋を巡ってシングルを探して買った。日本版のLPも買った。変形盤やピクチャーディスクのLPやEPも集めた。とにかくScorpionsが大好きだった。
 やがて自分の音楽的趣向は変化したが、Scorpionsのファンで在る事は変わらなかった。リリースされる新作は買ったし、ライブにも足を運び続けた。

 そんなある日、ステイトメントが発表された。「新作発表後、2012年までワールド・ツアーを行ってバンドは解散する。」
 衝撃的かも知れないが驚きはしなかった。1965年に結成され、1972年にデビューしたバンドだ。メインメンバーも既に還暦を迎えている。体型を維持し、ステージを飛び回れる体力のある絶頂の内に、バンドの歴史を締めくくりたい・・・その気持ちは分かる。遂にその時が来たか・・・そう思っただけだ。

 そして2010年。ラストアルバムとなるハズの17枚目のスタジオ・アルバム『Sting in the Tail』がリリースされた。

蠍団とどめの一撃

スコーピオンズ / SMJ


 良いアルバムだった。40年以上にわたるScorpionsの歴史を締めくくるに相応しいアルバムだった。
 そして、そのアルバムの最後に用意された曲、Scorpionsの最後のメッセージとも言える曲が、「The best is yet to come」だ。





 乾いた平原
 不毛の大地を越えて
 俺はお前に歌を教えた
 お前は全てを教えてくれた
 夜はまだ浅く
 俺たちは知らない 生きて朝を迎えられるのか

  ※頂点はまだ先だ
   俺もお前もそれを知っている
   俺たちは始まったばかり
   山も谷もあるだろう
   どうしてお前無しで生きられる?
   お前は俺の一部なのに
   いつだってお前だけだ
   永遠の若さをくれるのは
   頂点はまだ先だ

   Na na na na
   まだ見るな 頂点はまだ先だ
   Na na na na
   この手に掴まれ 頂点はまだ先だ

 あの頃を思い出す
 笑ったり泣いたりした日々を
 俺は何ひとつ変えなかった
 変えようとしても無理だった
 風雨を越えて
 俺たちの歌の魂は永遠だ

  ※(くりかえし

 感じるか
 お前の心に あらゆる場所に
 その夢を持ち続けろ

 新たな道を越え
 新たな一日に立ち向かう
 兵は死なず
 ただ消え去るのみ
 老け込んでなんかいられるか
 人生のサントラはロックンロールだ

 ※(くりかえし)

 (訳:斉藤真紀子)


 思えばScorpionのキャリアとしてのハイライトは'90年代前半、『Crazy World』の時代なのは間違い無い。それ以降は、キャリアに相応しい名誉職的な仕事はあっても、アルバムのセールスも、クォリティも下がっていた。いわばロックバンドとしては老いて行きつつあったのは事実だ。
 そんなバンドが去り際、最後に放った言葉が"The best is yet to come"・・・俺たちの人生のサウンドトラックはロックンロールだってのに、老け込んでなんか居られるか!頂点はまだこれからさ!バンドは解散しても、これは俺たちの新たな門出なんだ。
 そんな事を言われて、どうして涙をこらえる事が出来る?

 そしてバンドはラストツアーに旅立った・・・。


 アルバムもツアーも歓喜でもって迎えられ、ツアーブッキングは次々と追加された。ライブ・アルバムも発売された。
 ラストツアーは続く・・・2010年・・・2011年・・・そして2012年



 ・・・2013年・・・2014年・・・あれ?
 「いやぁ、一寸誤解されちゃったんだけど、引退するってのは、アルバムを出して長期のツアーに出てっていうパターンを止めようって話でさぁ・・・。」とかインタビューでの言葉が濁って来たなぁ・・・と思っていたら、2015年、まさかのニューアルバムが発売された。

祝杯の蠍団~リターン・トゥ・フォエヴァー-デラックス・エディション-(完全生産限定盤)

スコーピオンズ / SMJ



 「ツアーに出たら気がついたんだ。新しい世代のファンが出来ている事にね。」
 「ギターを置くには楽しすぎる!」

 ・・・ですって。
 そうですか・・・それは良いとして・・・

 返せよ!俺の流した涙を返してくれよ!
 (ノД`)・゜・。
by redsoldiers | 2015-03-06 16:06 | 音楽 | Comments(0)

歴史軍装研究と模型製作の狭間に


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