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『ノーム』

 世界三大観察日誌といえば、『ファーブル昆虫記』『シートン動物記』・・・そして『ノーム』でしょう。

ノーム 不思議な小人たち 愛蔵版

ヴィル・ヒュイゲン / グラフィック社


『ノーム 不思議な小人たち 愛蔵版』

文/ヴィル・ヒュイゲン
絵/ソーン・ポールトフリート
訳/遠藤周作
   山崎陽子
   寺地五一

グラフィック社 2013年
ISBN978-4-7661-2465-1 C0798
 

 『ノーム』はオランダの医師ヴィル・ヒュイゲン(Will Huygen)さんと、画家のソーン・ポールトフリート(Rien Poortvliet)さんとが、20年の歳月を掛けて、北欧を中心に欧州全土、シベリア、北米国に暮らす不思議な小人ノームの生態を観察、記録した本です。

 1976年に出版以来(日本版は1979年)、世界50ヶ国でベストセラーという言葉は伊達ではなく、外国人にこの本の話をしても、「知ってる見た事ある。」とか、「学校の図書館にあったね。」といった反応が返ってきます。かくいう私も、この本に初めて触れたのは中学校の図書室でした。
 当初はサンリオから三冊組で出版されていたと思いますが、その後に出版元が代わったり、一冊にまとめられた愛蔵版が作られたりしていました。昨年(2013年)10月に復刻されたのは、この愛蔵版です。

 本の中では、生物学的見地から、また彼らの日々の生活から人生・社会に至るまで文化的観点から、詳細にノームについての観察と、口述及び文献記録の収集の結果がまとめられています。
 しかし、20年の歳月を掛け、多くの労力と真摯な気持ちで向き合っても、尚、「表層的な部分しか見ていない。」と、初稿を読んだノーム達にガッカリされたといいます。価値観も歴史も違う集団を理解する事が如何に難しいか・・・という事でしょう。
 しかし、その正確さは100%とまでは言えないまでも、ノーム評議会の公認を得たという評価は、非常に大きいのでは無いでしょうか。

 またポールトフリートさんの描く絵は美しくも素朴で、夜行性で暗闇の中で生活しているはずのノームの姿を、色鮮やかに描き出しています。
 昔ながらの水彩画の風合いは、最近流行の不透明水彩やCGを用いた物とは一味違い、そこもまた嬉しいポイントです。

 中学生の頃に夢中になった本に、そして時折、古本屋の棚で再会をしていた本に、こうして改めて触れる機会に感動し、思わず本棚の一員に加えてしまいました。


 なお、ノームの天敵であるトロールを世界で初めて映像で捉える事に成功したドキュメンタリー『トロールハンター』もお勧めです。
 トロールと、トロールハンターことノルウェーの特別国家公務員ハンスさんに迫ります。


by redsoldiers | 2014-01-12 17:36 | 書籍 | Comments(0)

歴史軍装研究と模型製作の狭間に


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