『覇王と革命 中国軍閥史1915-28』
2013年 10月 31日
もう随分と昔、人民K同志が主催する赤軍愛好会の秘密会合(オフ会)に初めて参加した時の事。
赤軍愛好会というからには話題の中心はソ連軍か、せいぜい東ドイツ軍であろうな・・・と思っていた所、話題の中心は中国軍で度肝を抜かれた。しかも、最も熱くコレクションや資料を見せ合い、闊達に情報交換をされていたのは「青天白日」の国民党軍の軍装品に付いてで、二度度肝を抜かれた。
国共合作の時代、確かに共産党軍も国民党軍の一部だったとはいえ、何故、国民党軍!?
「赤いお母さん同志、国民党はボリシェヴィキなんですよ。」
・・・今になってみると、なるほどな・・・と思う。
そんな中、今ひとつ気を惹かれたのは、国民党軍の打倒対象となっていく軍閥であった。
群雄が割拠する軍閥史・・・。「なんで世の中、三国志好きばかりなんだろうな・・・面白いと思うけどなぁ、軍閥史。」と人民K同志がつぶやいていたのを思い出す。
結局の所、初心者も取っつきやすい本が無いから・・・という理由に落ち着いた。
共産党からにしろ、国民党からにしろ、革命史的には、軍閥は暗黒時代を招いた打倒されるべき悪として十把一絡げに論じられ、丁寧に功罪を読み解かれる事が許されない時代が続いたのだから致し方あるまい。
しかし、改革解放の波に乗り、軍閥に関する研究や出版が活発になり出した昨今。それらの資料を読み解きまとめた本が、こうやって日本でも出版される様になるとは、有り難い事だ。
『覇王と革命: 中国軍閥史1915-28』
著/杉山祐之
白水社 2012年
ISBN978-4-560-08256-0
本書では、帝政を企み国が割れていく袁世凱統治末期から、張作霖の爆殺と国民党の北伐完遂迄を、袁世凱の子供達というべき北洋軍閥に重心を置き、南方の軍閥及び国民党との対立を軸にして、物語は展開していく。
それ故に、北洋軍閥以外の記述は薄目で、特に新彊を初めとする西方の軍閥は触れられていない。
革命史観を剥ぎ取って、十把一絡げに反革命とされた人物達に、改めてスポットライトを充てていく・・・という内容は、いかにも読売新聞の現地特派員が書いた本だな・・・と思わせる。
筆者自身も歴史家ではなく新聞記者であるし、この本は歴史専門書では無い。
それ故、キチンと資料に当たっているのだが、語り口は物語に近い。平易で読みやすく、歴史の一つの流れを追いやすい。正に群雄が割拠する中で、登場人物達の顔が見えるように、様々な証言や風伝を挟みながら物語は進んでゆくのは楽しいし、人物を把握しやすい。巻末の登場人物リストも有り難い。
反面、物語的である故に、流れや人物像が筆者の恣意的に成らざるを得ない。
例えば、段祺瑞、呉佩孚が大好きなんだろうな・・・と感じると共に、共産主義勢力や(特に)馮玉祥が大嫌いなんだろうな・・・という感じさせる物語に成っている。第二次奉直戦争で呉佩孚率いる直隷派が瓦解すると、途端に行間の輝きが失われるのは気のせいだろうか。
日本の戦国史などでもそうだが、群雄割拠の時代を描こうとすると、どうしても人物史と合戦史で紙面が一杯になってしまい、政治・経済史の部分がおざなりになってしまう。
また革命史観を剥ぎ取ったせいもあり、大衆運動や社会世相などの記述が希薄だ。
焦点を絞る為には致し方無い事なのだが、それ故に、何故その様な展開になるのか分かり難い部分が出てきてしまう(本国でも、その辺りの研究が進んでいないのだろうけども)。
それでもこれだけのヴォリュームのある内容を、分かり易く読みやすく一冊の本にまとめ上げた作業は素晴らしいし、ようやく私も軍閥史を気軽に楽しむ事が出来た。
赤軍愛好会というからには話題の中心はソ連軍か、せいぜい東ドイツ軍であろうな・・・と思っていた所、話題の中心は中国軍で度肝を抜かれた。しかも、最も熱くコレクションや資料を見せ合い、闊達に情報交換をされていたのは「青天白日」の国民党軍の軍装品に付いてで、二度度肝を抜かれた。
国共合作の時代、確かに共産党軍も国民党軍の一部だったとはいえ、何故、国民党軍!?
「赤いお母さん同志、国民党はボリシェヴィキなんですよ。」
・・・今になってみると、なるほどな・・・と思う。
そんな中、今ひとつ気を惹かれたのは、国民党軍の打倒対象となっていく軍閥であった。
群雄が割拠する軍閥史・・・。「なんで世の中、三国志好きばかりなんだろうな・・・面白いと思うけどなぁ、軍閥史。」と人民K同志がつぶやいていたのを思い出す。
結局の所、初心者も取っつきやすい本が無いから・・・という理由に落ち着いた。
共産党からにしろ、国民党からにしろ、革命史的には、軍閥は暗黒時代を招いた打倒されるべき悪として十把一絡げに論じられ、丁寧に功罪を読み解かれる事が許されない時代が続いたのだから致し方あるまい。
しかし、改革解放の波に乗り、軍閥に関する研究や出版が活発になり出した昨今。それらの資料を読み解きまとめた本が、こうやって日本でも出版される様になるとは、有り難い事だ。
『覇王と革命: 中国軍閥史1915-28』
著/杉山祐之
白水社 2012年
ISBN978-4-560-08256-0
本書では、帝政を企み国が割れていく袁世凱統治末期から、張作霖の爆殺と国民党の北伐完遂迄を、袁世凱の子供達というべき北洋軍閥に重心を置き、南方の軍閥及び国民党との対立を軸にして、物語は展開していく。
それ故に、北洋軍閥以外の記述は薄目で、特に新彊を初めとする西方の軍閥は触れられていない。
革命史観を剥ぎ取って、十把一絡げに反革命とされた人物達に、改めてスポットライトを充てていく・・・という内容は、いかにも読売新聞の現地特派員が書いた本だな・・・と思わせる。
筆者自身も歴史家ではなく新聞記者であるし、この本は歴史専門書では無い。
それ故、キチンと資料に当たっているのだが、語り口は物語に近い。平易で読みやすく、歴史の一つの流れを追いやすい。正に群雄が割拠する中で、登場人物達の顔が見えるように、様々な証言や風伝を挟みながら物語は進んでゆくのは楽しいし、人物を把握しやすい。巻末の登場人物リストも有り難い。
反面、物語的である故に、流れや人物像が筆者の恣意的に成らざるを得ない。
例えば、段祺瑞、呉佩孚が大好きなんだろうな・・・と感じると共に、共産主義勢力や(特に)馮玉祥が大嫌いなんだろうな・・・という感じさせる物語に成っている。第二次奉直戦争で呉佩孚率いる直隷派が瓦解すると、途端に行間の輝きが失われるのは気のせいだろうか。
日本の戦国史などでもそうだが、群雄割拠の時代を描こうとすると、どうしても人物史と合戦史で紙面が一杯になってしまい、政治・経済史の部分がおざなりになってしまう。
また革命史観を剥ぎ取ったせいもあり、大衆運動や社会世相などの記述が希薄だ。
焦点を絞る為には致し方無い事なのだが、それ故に、何故その様な展開になるのか分かり難い部分が出てきてしまう(本国でも、その辺りの研究が進んでいないのだろうけども)。
それでもこれだけのヴォリュームのある内容を、分かり易く読みやすく一冊の本にまとめ上げた作業は素晴らしいし、ようやく私も軍閥史を気軽に楽しむ事が出来た。
by redsoldiers
| 2013-10-31 14:23
| 書籍
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